2018年1月8日月曜日

異類婚姻譚


本谷有希子 
154回 芥川賞受賞作

2018年正月芥川賞読書会第2作目。

以下ネタバレも含みます。ご了承ください。

すごい。また、難しい。
難しいという感想は僕の中では賛辞だ。わからないという感触は自分を成長させうるから。

主人公のサンちゃんは旦那の顔と自分の顔がそっくりになっていると感じる。
ありきたりな、よく誰もが思う命題を掲げる。
自堕落な旦那。その顔が生き物じゃないみたいに、気味悪く変貌していく。
サンちゃんはそれが自分自身も同じなんだと考える。自分自身も自分を保っているのだろうかと。
その中で、キタエという老婆とその猫の問題。
猫はションベンをあちこちに撒き散らすため、キタエ夫婦はその猫を山に捨てようとする。
猫というのは、同様に家族であり、この本の中では、それは自分たちを捨てるようにも見える。どれほど正当な理由を持ち出していても。
自堕落な夫はゲームにハマり、油ものにハマり、サンちゃんは籠絡され、受け入れる。
最終的に、夫は山芍薬に変化し、妻はそれを山に還す。

"立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花"

芍薬になった夫をどのように解釈したらいいだろうか。
現代社会に疲れきっている夫。
恐ろしいことに、夫の内面と社会性を説いたことはこの文中にはない。それを僕は、夫が話したがらないから、聞くことをしなくなったのだと思っていたが、それは同時に、サンちゃんも考えることを放棄していたからだということが終盤に判明した。
夫は、なぜ山芍薬を選んだのか。
芍薬は美人の象徴だが、どういう意味があるのか。


芍薬の属名はPaeoniaというらしいが、ギリシャ神話の医の神  Paeonにちなんでいるらしい。
うーむ。芍薬甘草湯だしね。
ボタンと違って、草木。
ボタンは花王と呼ばれ、芍薬は花の宰相「花相」と呼ばれるらしい。
冬には枯れてしまう花。

山芍薬は? Paeonia japonica
日本に多い。
茎の高さは30-40cm, 茎の先端に直径4-5cmの花を一つつける。
花は白色、開花して4日程度で枯れる。
準絶滅器具種らしい。

意義がよくわからない。
単純に、女性のように綺麗な人に、考えなくてもいいように花に。という意味なのだろうか。
サンちゃんがこれまで花であり、これまでの男性が土で栄養を与えられるとともに自分自身を型作られていた経緯から、自分自身がそちら側に立ちたかったということか。それでは単純すぎて、わざわざ、本当に姿を変えなくてもいいのにと思ってしまう。
姿を変えたのは、ギリシャ神話の変身物語をおおもとにしてるのでしょう。
ヒュアキントスやナルキッスス、チューリップのように。
ギリシャ神話では、変わった物語と変えられてしまった物語が存在する。
変えられてしまったと考えた場合でも、山芍薬は少し不自然に思える。なんでか説明しにくいけど。

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